「成長」への疑問と「何もしない」午後。 沼畑直樹

「成長」への疑問と「何もしない」午後。 沼畑直樹
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「国」という単位で物を考えるとき、必ず「経済成長」が目標となる。 企業のようだ。

 

しかし、なぜ去年より「成長」しなくてはならないのか、誰も答えてくれない。 去年と同じでは駄目なのか、少し落ちては駄目なのか。

 

少し落ちた年は、失敗の経営なのか。   経済成長を続ける今の中国は、手放しで素晴らしいのか。 かつて倉本聰さんにインタビューした際、「お金を借りなくては成立しない農業は危険だ」と警告していた。

 

『北の国から』で、借金して拡大した農地が、雨で破壊されるシーン。 あれは、そういった彼のメッセージだった。

 

嬉しいことに、日本はバブルを経て、「成長」だけに価値を見いだせない人が多く存在するようになった。 彼らは、企業とも広告とも関係がない暮らしをするので、見つけることはイージーではない。

 

しかし、存在している。

 

家、仕事において、「成長させない」暮らしは浸透しつつある。 それは今まさに爆発寸前で、各メディアでも取り上げられるようになったので、カルチャーとして認知される日も近い。

 

それでは、個人の場合はどうか。 個人において、「成長しない」という価値は通用するのか。   「成長しない自分」を認めることはできるのか 。

 

当然のことながら、多くの人がそうであるように、私個人も中学あたりから勉強ばかりしてきた。 勉強熱は大人になっても冷めず、開いた時間があれば勉強ばかりしている。

 

「自分を成長させる」というのは、終わりのない強迫観念のような気がする。   そんな人間の場合、まず「待つ」ことがあまり好きではない。

 

「待つ」ぐらいだったら、何か本でも読みたい。 旅行に行けば、どこの店に行き、どこの名所に行き…となる。

 

それが数年前、箱根の弓庵という宿に妻と二人で行ったときのこと。 観光はまったくせず、ただ室内のお風呂に入り、部屋でのんびりしていた。 「何もしない」旅だ。   昼からテラスでビールを飲む。 持ってきた本を読む。

 

素晴らしい休暇だった。

 

そんな思い出を思い出しながら、「何もしない」という過ごし方は素晴らしいと最近はずっと考えている。

 

でも自分は、「何もしない」という行為を今まで認めてこなかった。 クロアチアで感じた「幸せのイメージ」を追い求めているが、それが「何もしない」ということと結びつかなかったのだ。

 

結びついたのは、つい先日のこと。   先週、クロアチア観光局主催の「ハートフルカフェ」で、片山局長が言っていた言葉だ。 「クロアチアには、カフェのテラスや海辺で、何もせずに、人と会話したりしながら、のんびりと過ごす文化があります」   おそらく、片山さんとは長い付き合いので、同じようなことを何度も言っていたかもしれない。

 

でも、気づかなかった。

「何もしない」は、文化なのだと。

 

クロアチアで感じた「幸せのイメージ」とは、こんな体験による。 数年前、クロアチアのロヴィニィの海辺のホテル。 バルコニーで飲んだビールが美味しくて、幸せだった。 その日は移動日だったから、昼間からそこでビールを飲んだのだった。仕事や観光はせず、ただそこでみんなとビールを飲むという時間。

 

別の年、スロヴェニアのブレッド湖は、観光客も店員も、みんな「何もしない」ことを楽しもうという雰囲気を持っていた。町全体が、ゆったりとしているのだ。

 

その雰囲気の良さがどこから来るのか、ずっと考えていたが、「何もしない」ことがキーとなるとは、思ってもいなかった。

 

今、そういった雰囲気をこの東京周辺で実現したいと考えている。 が、今のところ、それを実現してくれる店は見つかっていない。

 

昼からお酒を飲んで、夕方あたりまでテラスで本でも読めるところ。 一泊で近場に旅行に行った場合、チェックインは14時以降、アウトは11時ごろなので、昼が滞在できない。     吉祥寺、井の頭の場合。   井の頭公園の池は、一見、湖の雰囲気も持っている。

 

最近は行ったことのないフランスのアヌシーに注目していて、湖畔をストリートビューで「散歩」しているが、井の頭の小さい池でも、突然そんなアヌシーの雰囲気を感じるときもある。

 

子供が一歳なのでアヌシーには行けない。     だから、自分の住んでいるここで実現させる。

 

そうして今、この街で実行しているのは以下の通り。 ・2メートル四方のレジャーシート(厚くてお尻が痛くならない、ビニールではない布地のもの)を買って、芝生の上で子供を含めた家族3人で朝からのんびりする。 ・公園内の有料部分のテーブルでお昼を食べる

 

井の頭公園はベンチが取り合いになるので、有料の園内であれば必ずと言っていいほど座れる。 とても幸せだが、シートの比ではない。シートでの幸せ度は、花見と同じなので非常に高い。

 

しかし、子供も妻もいない一人の場合、もしくは友人との場合、毎回シートは非現実的だ。   となると、取り合いにはなるが池沿いのベンチが理想的だ。

 

今日(5月20日)、テーブルマガジンズのHACHIIIとそれをテストしてみる。 あの雰囲気を感じるには何が必要なのか。   素直にテラス席のある公園内の店がいいかもしれないし、ベンチなら簡易テーブルがあるほうがいいような気がする。

 

ビールを入れるコップは、紙コップじゃなくて透明のほうで…。

追記

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あれこれ考えていると、あの井の頭公園の固い椅子では駄目なような気がした。 なので、キャンプ用の椅子を買った。

 

前はベランダで使っていたが、雨に弱く、すぐに駄目になるので二度と買わないと誓っていたが、買った。

 

あと、テーブルが必要かどうかも知りたかったので、持ち運びのできる簡易テーブルも買った。   まず、テーブルは便利で素晴らしかった。 しかし、何より椅子の力が素晴らしかった。

 

この椅子に座ったあと、公園の椅子に座ると「はやく帰りなさい」と言われているかのようだった。

 

公園でこの緑色の椅子に座って本を読んでいると、ふとクロアチアのような、もしくは山の中のキャンプ中のような気分になる。   まだわからないが、しばらくはこの椅子を持って公園に行くつもりだ。

Author Profile

沼畑 直樹
Numahata Naoki
最小限主義者 既婚ミニマリスト 
著作 『最小限主義。』(韓国版2017年5月発売)、写真集『ジヴェリ』『パールロード』他(Rem York Maash Haas名義)。旅ガイド『スロウリィクロアチア』


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