minimalism in NY①
共有ルールはミニマルに
佐々木典士

ニューヨークの8泊9日の旅が終わった。

感じたことはいっぱいあるけれども、今回はニューヨークで感じたミニマリズムについて。
アメリカは土地も、車も、食べ物も(オーガニックのハンバーガー屋さんなどではハンバーガーは日本人サイズだった)何もかもデカい国でマキシマリズムの国ではある。

しかし、とても合理的に、最小限にすることのメリットを考え尽くしている国でもある。

地下鉄のわかりやすさ

 

たとえば地下鉄。地下鉄はどこまで行っても2,75ドルで観光には本当にありがたい。ぼくが買ったのは1週間乗り放題になるもの。同じチケットでバスにも乗れる。(ちなみにニューヨークの地下鉄は「バットマン」のゴッサム・シティみたいなイメージがありますが、実際はとても安全です)

 

行き先もアップタウンに行くか、ダウンタウンに行くかみたいな表示を見れば、どちらの方向に行くのかわかる。(東京で言えば東西線が、「東に行くか」「西に行くか」という表示をしているようなもの)駅名は「14st」とか通りの名前が多かったりして、シンプルでわかりやすい。

ニューヨークの土地はそもそも碁盤の目で、住所も「◯◯通り」と「◯◯ストリート」が交差する場所。みたいなので想像が付きやすい。

新宿や池袋は日本人でも「ダンジョン感」が半端ないけれど、海外の人が来たらどう思うんだろうか。カオスな雰囲気をおもしろがってくれる人もいるんだろうけど。日本の地名や駅名は複雑だけれど、歴史もあって、味わい深くもある。

 

現金はほぼ必要ない

クレジットカードでの支払い。
現金ではなくクレジットカードでの支払いがほぼ定着していて、こんな屋台ですらカードが使える。(ニューヨークにはホットドッグや、ベーグルやハラールの料理や屋台がたくさんあって、小商いもやりやすそう)

 

1$以下の支払いでカードを使うひとも多いという。(わずかに、小さなお店で最低5$以上とかミニマムの使用を求めているところはあります)。ぼくはVISAデビットカードを日本でも使っているのだけどこれが本当に便利。海外のよくわからない小銭を計算する必要がないし、その場で日本円で自分の口座から引き落とされるので、わざわざ換算しなくても日本円での請求額がその場でわかるし、不正な請求でもないとわかる。
現金を使ったのは、チップのための小銭を作るためぐらいと、コインランドリーぐらい。現金が必要になれば、VISAデビットカードのATMで自分の口座から直接引き落とすこともできる。そういえば、チップの考え方はよくわからなくて不便でもあるが、気持ちのいいサービスをしてくれた人に、お礼として自然にお金のやり取りができるというのはいいかもしれない。(日本人ならいいえお金なんて、という美徳が邪魔をする)。ニューヨークのレストランでも予め料金に上乗せされているところもあるし、チップを廃止しつつあるレストランもあるという。
日本に帰ってきて面食らったのは、関西空港から乗るバスのチケットを買うのに、いきなり現金が必要だったこと。料金の端数は50円で、来た人はいきなり100円と50円のギザギザがどう違うのか見分けなければならない。これでは観光客は大変だと思った。

 

UBERは便利すぎ

 

そしてUBER。想像のはるか上空、カリン塔に迫る勢いで便利だった。(詳細はまた別の連載がスタートする予定なのでそちらで)

・行き先を言わなくてもいい(事前にアプリで設定する)
・事前に登録されたナビを使って行くので、道を知らない運転手さんにイライラしたり、住所をナビに入れたりする手間もない。
・支払いは先にクレジットカードで終わっている
・つまりボラれる心配ない
・お互いに現金持たなくてすむので安全

 

 

タクシーのメリットを考えてみると、地方に行った時なんかにローカルに詳しくて、質問に慣れているドライバーさんならおすすめを聞いたりできるのは楽しいかも。ちなみにニューヨークでもイエローキャブはまだまだたくさん走っていて、一般的です。黄色い見た目もかわいので、ニューヨークの景観を作っているとも言える。UBERを呼んだらタクシー用の車が来ることもあるらしくて、これからはハイブリッドになるのだろうか。
地下鉄はよく遅れるらしいけど、そういうものが遅れる前提でみな動いているので、少々の遅刻を責める人はいない。ぼくも日本だとよく乗換案内とにらめっこしてるけど、ニューヨークではのほほんと待つことができた。

なぜミニマルなルールが必要なのか?

 

 

タイムズスクエアに行ったときの衝撃が忘れられない。ここでは世界中からあらゆる人種の人が集まり、あらゆる言語が話されている。奇人変人大集合という感じで、あらゆるファッションの人が自由に闊歩している。感じている温度も違うみたいでTシャツの人も、ダウンジャケットの人もいる(笑)。たとえは悪いかもしれないが、なんだか動物園みたいだと思った。(そんな感想を友人に伝えたら、「ズートピア」はニューヨークがひとつのモデルとなっているらしい)あらゆる人種を載っけたノアの箱舟みたいだとも思った。

書いてきたような合理性、ミニマリズムが徹底されている理由がわかった。おそらくはこんな多国籍で、多民族で、多言語なひとたちが毎日を過ごすのには、ミニマルなルールでないととても共有できないし、複雑なルールや覚えることが多くてはやっていけないのだと思う。
日本にも海外からの観光客が増えている。そしてオリンピックも控えている。
ニューヨークがすごく便利だったので、また行きたいと思えるようになった。
そんな風に、また来たいと思ってくれるためには、理解しやすいミニマルなルールが必要だ。

 

ぼくは旅行者だったので、ニューヨークのいいところに思わず目がいってしまう。どちらがいいという話ではもちろんないけれども、学ぶべき点は本当に多いと感じた。ニューヨークの人は、日本で行ったコンビニの丁寧さを賞賛していた。日本もニューヨークもお互いに学ぶところがあるんだろう。

 

自分のいる場所を、違う視点から眺めることができる。

これこそ旅の醍醐味だ。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。