立場を変える学び
佐々木典士

車に乗るようになって、いろいろわかったことがある。

 

まずは、車はとっても死角が多いということ。後方や左右の確認をするミラーを見るのは適時であり、まわりの360度を常に把握しているわけではないということ。

 

Twitterの有名な写真。

https://twitter.com/fukaban/status/902806475172544512

 

東京では自転車通勤していたけど、「相手も常に自分を把握してくれているだろう」と思い込みのもと、車に近づきすぎたりしていたと思う。今ならば「ここらへんは見づらいはず」と思うところには近づかない。

 

そして暗くなってライトをつけないのは自殺行為だとも思うようになり、ライトも気づいてもらいやすいなるべく明るめのものがいいと思うようになった。歩行者としての意識も変わり、車の特性を意識しながら歩いている。

 

 

街には看板がたくさんあって、ただやかましいと思っていたが、車に乗ってみればなるほど、看板というものは、早いスピードで動く物体に乗りつつ、しかも両手が離せない状態で、目的のものが遠くからでも見つけられるように設置されているのだとわかった。(それでもうるさい看板は好きではない)

 

 

ライターとして活動するようになって、いろんな編集者の方と仕事をするようになった。大きな会社や、ブランド力のある媒体の編集者が気持ち良い仕事をするかといえば、必ずしもそうではない。もちろん小さいからといって丁寧なわけでもない。

 

 

今、とても丁寧な仕事のされ方をする編集者と仕事をさせて頂いている。ライターの立場から見て嬉しい配慮がある。依頼も、普段のやり取りも、原稿に対する感想も丁寧。内容は自由にさせてもらいつつも、手を抜かずに向き合ってくださっている。

 

 

確かに、ライターが媒体のブランドや大きさで、仕事を判断することもあると思う。しかしライターのモチベーションはそれとは全然違うところでも生まれてくることもわかった。手を抜かず、労力をかけてくれる人には、この人のためにもこちらも相応のものを提供しようと思える。

 

 

自分の編集者時代を思い出して、反省することしきりだ。しかし、ライターとしての立場を経験したから、次に編集者として仕事をするときはもっとうまくやれると思う。

 

 

ちきりんさんは、採用において「リーダー経験」が求められるのは、その人のリーダーシップに期待されているわけではなく、リーダーがどうやったら動きやすいか、困らないかがわかっているから、リーダーの元でチームメンバーとして働いたときに全体のパフォーマンスが上がるからだということを言っている。

 

下記は、ちきりんさんが例で上げている忘年会の例。頷くことしきり。

 

 

歩行者や自転車に乗る人は車にも乗れ。編集者はライターとしても活動しろ。

と言いたいのではない。たとえば、お前もいっぺん家族持てや、と言われても困ってしまう。

 

 

違う立場を経験すると、今いる立場がもっとうまくできるようになる。世界がさらに立体化されて見えてくる。

それは自分とは違う立場が実感としてわかるから。そして実感としてはわからなくても、想像を働かせることはいくらでもできる。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。