酒はやめても、つぐことはできる
佐々木典士

モノを減らしてからというもの、飾り物や雑貨などを買うことがほとんどなくなった。

 

だから、たとえば雑貨作りや陶芸をされている人とどう付き合ったらいいのか、最初は確かに距離を測っていたと思う。先方がこちらを気に入らないことも、もちろんある。

 

 

あるテレビでは「芸術は無駄から生まれた」という文脈でミニマリストが批判されたこともある。

でも、何かが違う。ぼくは雑貨や芸術を批判しているわけではなかったから。

 

 

雑貨は今でも好きで、いくらでも眺められてしまう。「いきもにあ」という生き物の雑貨が勢揃いしたイベントも本当に楽しんだ。その時は、消耗品のポチ袋を買った。

 

 

芸術も変らず好きだ。そして、展覧会に入場料を払って見に行くことや、作家さんに質問や感想を伝えること、感想をブログに書くことなど、何かを所持する以外にさまざまな関わりができることがわかった。

 

 

お酒やお菓子もやめた。これも同じで、だからといってその中にあるすばらしい文化を否定しているわけではない。

(寺田本家のお酒と、タルマーリーのビールだけはOKということにしようか?  とか散々悩んだ)

 

 

パティシエやソムリエや酒造りの職人とも、その成果を味わうこと以外での関わりができると思っている。お菓子作りや、お酒を作ることはその人の大事な部分だけど、その人の全体ではないから。

 

 

ぼくが影響を受けるのは「ミニマリスト限定」「ぼくの本を読んでくれた人限定」では断じてないのと同じ。そうではない人からもたくさんの学びと気づきを得て、コミュニケーションをとることができる。

 

 

「お酒をやめたい」と思っている人はとても応援したいし、コツを伝えたい。しかし今「やめたい」と思ってない人に無理強いしないのは、ミニマリストのときと同じ。タイミングは人によって違うから。

 

 

お酒をやめたからといって飲みの席に参加してはいけないわけではない。

 

 

細部をやめても、全体に関わることはいくらでもできる。

「酒はやめても、つぐことはできる」

これから端的に、こんな言葉で表現したいと思う。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。