「モノの人事異動」と最近使っているタオル
佐々木典士

ゆるりまいさんは、モノの用途変更を「モノの人事異動」と呼んでいる。たとえば、ゆるりさんは使わなくなったが形のかわいい鍋を、猫の水入れにしている。

以前「モノを社員として考える」という記事を書いたが、モノを会社で考えるのはなかなかおもしろい。自分の生活のためにいろんな役割を持ったモノが集まってくる、というのは会社っぽいし比喩として使いやすい。

 

モノを入社してもらってから人事異動させることもあるし、採用の段階で希望の部署と違うところに配属させることもある。

 

たとえば、以前は赤ちゃん用の洗濯石鹸を、洗濯だけでなく家中の洗剤として使っていたことがある。もちろんシャンプーにも身体を洗うのにも使っていた。

 

石鹸がいい例だが、◯◯用と用途別に細かく別れていても実際の成分はほとんどまったく変わらない。ということは多い。「繊細な赤ちゃんの服を洗えるなら自分の身体も問題なく洗えるだろ」と思って始めたのだが、実際になんの問題もなかった。

 

実際中身はほとんど同じでもこれは◯◯用、これは◯◯用と用途を区切って販売されていると、なんとなく専用のモノが必要なのかなと思ってしまう。そうすればたくさんのモノを買ってもらえる。

 

◯◯用という希望の部署があっても「キミ、実際はこっちのほうが向いてるよね」と入社の段階で適正を判断することもある。

 

ぼくは長らく1枚の手ぬぐいをタオルとして使っていた。シャワーを浴びたら髪と身体を拭いて、さっと手洗いし干す。手ぬぐいは数時間で乾くので、次使うときには乾いていて、1枚で延々とサイクルをまわしていける。手ぬぐいはビッタビタになるが1枚で拭けないことはない。今も旅行中は手ぬぐいだ。

 

手ぬぐいで問題ないのだが、もうちょっとバッファがあっていいかなと思って最近使い始めたのは「洗車用のタオル」である。赤ちゃん用石鹸のときと同じで、車を傷つけないように繊細に作られたマイクロファイバーなら、ぼくの身体も大丈夫だろうというわけだ。

このタオルのいいところは、まず手頃なサイズと吸水性(髪の長い女性は1枚では無理かもしれないが、吸水性が洗車用としても評価が高い)。そして独特のコシがあって、とんでもなくたたみやすいところが気に入っている。ストーンと2つに折れる。

「キミ、洗車希望らしいけどぼくのタオルとして働いてみない?」と採用を決めた。本人が意識すらしていない適正を見抜けると、なんだかおかしな満足感があるものだ。

 


洗車 タオル  傷防止 超吸水 マイクロファイバー(42x35cm) (4枚入)

もちろん洗車にも最高です笑。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。