「手放す力」たとえば会社も。
佐々木典士

会社を手放してみる

2016年の年末で、9年間お世話になったワニブックスを退社することになりました。
今後は、文を書くことを中心に、その他さまざまなことをナリワイとして組み合わせ生きていきたいと思っています。


思えば、会社員としては最高の自由を与えてもらっていました。
編集者は忙しい仕事ですが、自分の裁量がありました。
お給料も充分、作る本も内容も、ほとんどお任せ頂いていました。

でももっと自由が見たくもなりました。
働く場所の自由。自分の予定を真っ先に立てる自由。自分で決める自由。

実は「ぼくモノ」を書く前に、「これが会社にできる最後の貢献だ」となぜだか思い詰めていて、退社を決意していました。しかし、実践にあたってはそれなりに迷いもありました。

たとえば細かいデメリットとメリットをいちいちあげてみたりもしました。

【会社にいるメリット】
文房具とか備品とかが無料。光熱費も!それってすごい!
【フリーになるメリット】
会社のすぐ固まるパソコンを使わなくて済む! MacBook Air1台に集約だ!

こんなところまでいちいち想像してみました。

ミニマリズムの自由

決断するには、やはりモノが少ないことが後押ししてくれました。
小さい部屋でいいので家賃は少なくて済む。引っ越しも楽。モノを減らしてから、瞑想や登山やランニングなど、お金がかからない楽しみもたくさん覚えました。

よしながふみさんの名作「愛がなくても喰ってゆけます。」に
「俺はこういう時に自由でいるために、今まで何も持たないできたんだ!!」というセリフがありますが、あの場面とまさしく同じ気持ちです。

「手放す力」は背中を押してくれる

 

会社を辞めるというのは、暗闇のなかに一歩足を踏み出すような行為ですが、ミニマリズムを通じて「手放す力」を身につけられたことがやはりいちばん大きく背中を押してくれました。ぼくはいままで大事なもの、価値のあるものをたくさん手放してきました。そして自由な会社員という身分も、とても価値があるものでした。

しかし手放すと、新しい何かが必ず入ってきます。
そして大事に見えるものほど手放すと、得られるものも大きい。ぼくはこれを何度も体験しています。

これから何度も、ミニマリズムを通して得られた「手放す力」に助けられると思います。手放して何が入ってくるかはわからない、それでも必ず何かが入ってくる。一体どんな新しいものが入ってくるのか、今はとても楽しみでもあります。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。