悩みはジャグリング
佐々木典士

悩みが起きる条件はいろいろとあるが、ひとつは、課題がわかっているのにそれに手を付けられていないときだと思う。

悩みは、何もしていないときに起きる。

 

 

ぼくの場合で言えば、本を書かねばならないのに関連書籍も読まず、構成も作らず、一文字も書き進めていないようなとき。

課題解決のためになすべき手順を、行動に移すのではなく、頭の中でジャグリングしているときに「悩んでいる」状態になる。

 

「あの本も読まなきゃいけないし、説得力のある論理構成にして、類書とは違うポイントを作らなきゃいけない。デザイナーさんは誰がいいだろう? 読書メモもまとめなきゃ、そのために書きやすいエディタを探して使い方を勉強したい。あぁ、あの本も読まなきゃ……」

 

なすべき手順をぐるぐると頭の中でジャグリングし続ける。

こうすると課題がものすごく大きい複雑なものに見えてきて、面倒くさくなる。

 

 

面倒くさいから、結局何も手をつけず、ひととき自分を忘れられるものを楽しむ。

結局その後は「何も手をつけられなかった」と後悔し、悪循環がはじまる。

 

 

モノを手放すときもそうで、何か面倒くさいものを手放したいと思えばまず手順を細分化することをぼくは薦めている。

 

以前、ゲーム機を手放したときに考えた手順は

□買い取り先を調べる

□買い取りの流れを把握する

□見積もりを取る

□ちょうどいい大きさのダンボールをホームセンターに貰いに行く

□切れているガムテープをホームセンターに買いに行く

□梱包して、ダンボールにつめる

□郵便局で発送する

□買い取りに必要な書類や口座をメールで送る

 

大体こんな感じだった。これを書かずに頭のなかでジャグリングすると、結構面倒くさいものになる。

 

「こんなの買い取ってくれるところあるのかな? どれぐらいが相場なんだろう、メルカリも一応覗いてみようかな(関係ないもの見て30分経過)。そういえばいざ発送するとなってもダンボールないし、ガムテープも切れてるな。いっそ燃えるゴミに捨ててしまおうかな、いかんいかん資源の無駄だし、レアなものもあるかも。でもガムテープも買いに行かなきゃ、梱包材はあったかな…」

 

 

手順を書いてみると、頭のなかでジャグリングしていたお手玉の数が、意外と少ないことに気づく。

そして手順がわかれば、そのひとつに手を付ければいい。

 

経験上、悩むのは

「課題を進めたかどうか」という行為自体の有無であって

「どのぐらい進んだか」という進捗状況ではないと思っている。

 

 

今日できたことが、例えダンボールとガムテープを手に入れたことだけでもいい。

「確かに進んだ」という手応えがあるから。

リストのひとつは埋まったのだから、これを続けていけばいつかは終わる作業だと思える。

 

 

行動を起こしやすくするために課題を細分化する。

そして最初のひとつに手を付けるのだ。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。