『ぼくたちは習慣で、できている。増補版』 ──自己啓発の向こうに 佐々木典士

「ぼくたちは習慣で、できている。」を増補した文庫版がちくま文庫より発売になりました。何がオリジナル版からグレードアップしたのかお知らせします!

1 文章を読みやすく、論旨をわかりやすく

もうそんなに文章に手を入れるところもないよな、と思っておりました。しかしオリジナル版の発売から3年が経ってみると、かつて書いた文章にはアラが目立ち、下手だなと思うところが結構ありました。下手だなと思えるということは、少しずつでも何か成長していっているのでしょうか? そうであれ!
また論旨がツイストしすぎてわかりづらい部分は少しすっきりさせました。

習慣を身につけるための基本的な考えは当時と変わっていませんが、より明確になった部分もあるのでオリジナル版より論旨がつかみやすくなっていると思います。

2 習慣を身につけるためのルールを5つ追加!! 合計55のルールに!!

追加したのは
●習慣は自分との約束
●動機や報酬は複数持つ
●毎日やらないことは下手になる
●すぐに花丸をあげる
●人の習慣と折り合いをつける
という5つの項目。

総じて、習慣ができなかった時も自分を認めてあげることが大事ということを意識していると思います。本について話してほしいと言われることもあるのですが、本当に本の中にすべてを置いてきた、という感じなので、本にあること以上のことで言うことがないんですよね。つまり、網羅的によくまとまっているということです笑。

3 カバーの香山哲さんのイラストがかわいい!!

イラストかわいい、イラストかわいい、イラストかわいい!
香山さんの「ベルリンうわの空」はどこの小さな書店でも、愛されている感じで嫉妬です笑。香山さんに勇気を出してお願いできてよかった。香山さんからラフが上がってきた時に、足元に犬か、猫などを付きまとわせみてはどうか、という案を考え、恐れ多くもそれを採用頂きました。イラストがかわいいので、お手元にぜひ。

帯を外すと猫が見えます。

RT 表紙の絵を描きました。オビの下には、ねこがいます。全ページ、コツコツやるのを励ましてくれる感じです。— Tetsu Kayama (@kayamatetsu) December 31, 2021

香山哲さんの感想。嬉しい!

4 参考文献、出典を正確に詳しく!!

一般書の特徴として、何かを引用する時に、冗長性を避け読みやすさを重視するということがあります。ぼくもそれに倣ってきました。(たとえば、何かの実験を参照するときに、出典を明確にせず、ある実験で行われた~で済ませるとか。名言、格言の類も、言った人の名前だけで済ませるとか)


しかし、近年のエビデンスやソースの正確性に対する要請は強まっていて、ぼくもあまりに曖昧だったり、出典を明確にしないネットの情報や動画にはうんざりすることも多々あるので、できるだけ正確を期しました。あまりに昔の人すぎるものなどは別にして、基本的に誰かの言葉や、引用については辿れるようにしています。

参照した時のメモが失われていることもあり、ひとつひとつ出典を再確認していきました。今回はこの作業がめちゃくちゃに大変でした! 次にこんなことがないように活かします。

自業自得かもしれませんが、むちゃ大変でした。

5 phaさんの解説が嬉しい! 文庫版あとがきも読んでほしい。


オリジナル版の発売イベントでも対談させて頂いたphaさん。すごく共通した部分があると思っていて(めちゃくちゃ飽きっぽいところとか)本についてだけでなく、ぼく個人についての書き手としての資質を論じてくださり、大変嬉しく、励みになりました。

そして文庫版あとがき。本を書いてしばらくすると、自分の考えも少しずつ変わっていくところがあります。改めて客観的に見た自分の本について書きました。できた自分を好きになるだけでなく、できない自分、できない人をどう無条件に肯定するのか、というのが今の大きなテーマでそれについても書きました。

準備運動はもう充分

ぼくはこの本を書いてから、自己啓発やビジネス本を読むことが基本的になくなりました。自分を奮い立たせるような名言、格言も大好きでしたが、そういったものもあまり必要ではなくなったようです。

習慣を身につける=あまり考えずに、自動的に、自分の課題に取り組む。それが毎日できていれば、意識とか、取り組む姿勢を変えるとかそういった曖昧なものが必要ではなくなります。短い間意識が変わっても、その先の行動が変わらなければ、何も変わりません。そして思いついたときだけ行動してもまた何も変わらない。毎日のように継続するしかない。

効率的な方法論を探し続けるのではなく、適当なものが見つかったらとにかく続ける。大逆転はなく、とにかくコツコツやるしかない。じゃあすでに長年コツコツやっている人には勝てないじゃないかと思いそうですが、たどり着いた到達点ではなく、コツコツできた満足感は誰にも平等に与えられていると思います。習慣は自己啓発を超えているもの、向こう側にあるもの(beyond)という言葉を見かけたことがありますが、ぼくもそう思います。

ミニマリズムも習慣も、ぼくにとっては準備運動のようなものだったと思うことがあります。準備運動はそろそろ終わらせて、自分の課題に取り組みたい人にはぜひおすすめです。

ぼくは本を売って生活しており、ぼくへの課金先は今の所本だけです笑。次の本を書くまでの生活費になります。おいお前、次も良い本書けよと応援して頂けると嬉しいです。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。