スーパーマキシマムな財布
アブラサス レビュー(1)

かつてマキシマリストだったぼくは、なんでもかんでも大きく、重く、大容量、高機能なものを選んでいた。

財布もそうだった。つい2年ほど前、ポイントカードの整理に悩んでいたぼく。2つ折り財布を使っていたから、必要なポイントカードを取り出す度に、トランプでカードを切るように、すべてのポイントカードをたぐりながら目的のカードを見つける。これが毎回手間だった。

「よしポイントカードが、できるだけ収まる財布を買おう」

そう思って選んだのは、なんとカードを24枚収納できるトラベルウォレットを日常使いすることだった。減らすのではなく、すべて収納できる方を選ぶ。ぼくは完璧なマキシマリストだった。

編集者という職業柄、多量の現金を持ち歩く機会も多く、保存しなければならないレシートも大量に出てしまう。以前の財布には小銭もどれだけ出ても放り込めるスペースがあり、どこのお店のポイントカードにもスムーズにアクセスできた。はっきり言ってこの財布は便利で、とても気に入って使っていた。コンビニに行くときは、このデカい財布だけ小脇に抱えて行く。

「病院受付の人のランチタイムか」

とは誰も突っ込んでくれなかった。

気に入って使っていたマキシマムな財布。
が、部屋をミニマルにしたぼくはこの財布を眺め、
ごく自然にこう思った。

「これではいかん」

早速、ミニマリストにふさわしい財布の候補を洗い出した。
まずはアブラサスの財布。これはミニマリストの中ではもはや定番だ。
まだひねくれていたぼくは、みんなが持っている定番以外のものを選びたくなった。次にアウトドア系のブランドが候補にあがった。薄く軽く強い繊維。だがアウトドア系ブランドの財布は、そのほとんどがマジックテーブがどこかしらに使用されている。

支払いの際のマジックテープの「バリバリバリ」という音。ぼくもあまり好きではないし、世の女性陣からもすこぶる評判が悪い。

支払いのたびに
「違うよ、ぼくは合理的なミニマリストだから財布もミニマルにしたくてあえてこのマジッ(高い声で早口)」

といちいち説明するのもしんどい。
マジックテープは音に目をつぶりさえすればとても合理的だけど、選択肢からは外した。

唯一、この財布が候補に残った。
ノースフェイスのフライウェイトワレット。

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まだそこまでミニマリストのなかで定番ではないだろう。
ロゴが目立つのが気になるが、軽く、小銭もしっかり入る。

「……やるじゃない」

ぼくは思った。別にぼくが思わなくてもノースフェイスはいつもやっている。だがどこをどう検索しても、欲しい色の在庫がなかった。派手すぎる色は避けたいので泣く泣く諦めた。

そこでアブラサスの財布が再び候補にあがった。

「iPhoneやMacBook Airはみんなが持っているけど全然イヤじゃない。みんなが持っている、という理由で選ばないのはおかしい。無駄な自意識だ」

そう思い直したぼく。

調べるとアブラサスの商品が全て試せる店舗が渋谷で時間限定でオープンしているという。

ぼくはそのお店に足を踏み入れることにした。

アブラサスレビュー(2)へ続く

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。