残り物をあさり、あてもなく夜道をぶらつく。 そんな生き方をしていても、野良猫は自殺をしない。
自分を恥じることがないからだ。
公園の池でのんびり泳いでいる鴨は、資格を取ろうとか、保険に入ろうなどと考えない。
明日のことを、思いわずらわないからだ。
森に住むコヨーテは決して肥え太らない。
自分に必要な、獲物の量がわかっているからだ。
花に集うミツバチたちは、35年かけて自分の巣を作ったりしない。
自分たちが住むのに最適な住居がわかっているからだ。
なぜみな、動物のように賢く生きられなくなってしまったのか? 一歩外に出れば、本当にありとあらゆるものを通じて、脅迫的なメッセージがぼくたちに送られてくる。
できるだけお金を儲けましょう、より美しくスリムになりましょう、いい学校に入りましょう、快適な家に住みましょう、健康になりましょう、競争して勝ちましょう、もっとファッショナブルになりましょう、成長し拡大しましょう、いつか来る危険に備えましょう、さらに知識を蓄えましょう。
映画監督のトム・シャドヤックは著書『恐れと真実の対話』で、そんな状況をシンプルに喝破した。
「要するに“今のままの君じゃダメ”というわけだ」
今この一瞬を生きること。
足ることを知ること。
自分はすでに何者かである、と感じること。
自分自身であること。
いちどモノから離れてみる。
ぼくは自分自身に戻るための入口に、今立っている。