京都ミニマリストオフ会(1)

ほんとうに偶然のタイミングで、肘さんのブログ http://minimarisuto.jp/ でミニマリストオフ会が京都であることを知った。

 

ブログを見て、すぐに参加志望のメールを送る。

 

以前のぼくならメールを送る前に、参加のメリットとデメリットをあれこれ考え、そして考えることにも疲れ、そのうち自分を正当化する適当な理由をでっちあげて(まだ会う準備ができていない、人見知りだ、距離が遠い、他に仕事がいろいろ残っているetc……)参加を見送ったと思う。そもそもオフ会に参加することなんて一生ないと思っていた。 参加を即決できたのは、ぼくが以前より身軽になり、判断も早くなり、行動的になったからだ。

 

全部、ミニマリズムのおかげだ。

 

せっかく京都に行くのだからと、オフ会以外の行程も考えてみる。 ミニマリストを目指す身としては、禅は外せないテーマだ。禅寺に赴いて、禅についてもっと深く学びたい。 茶もミニマリズムとは近接しているテーマ。どこか体験できるところはないだろうか?

 

ミニマリズムというテーマが自分の中に確固としてあるので、やりたいこともすぐ決まる。 坐禅と茶の体験を今回はやってみたい。その2つで今回は充分だ。

 

目的もミニマルにし、充分に味わいたい。

ホテルもだいたいの検索ですぐに決めた。

新幹線のチケットは初めて自由席にして、乗る前に買う。 「自由」席!! ミニマリストにふさわしい席ではないかと一人思ってみたりした。

 

ぼくの仕事である、編集者はたびたび添乗員的な役割も果たす。 何時から何時まではここで撮影し、ここでお昼を食べ、次の目的地までの移動時間はどれくらいで…… ホテルがWi-Fiが使えるか、朝食は何時からか、スタッフの禁煙喫煙にあった部屋か。 毎回の食事は、スタッフが満足でき、予算の範囲でできるかぎり美味しい店を選びたい。自由席なんて、もちろん選択できない。不確定事項を減らし、安心をスタッフに届けるのが編集者の仕事だ。

 

もともとの几帳面な性格と、仕事の職業病も手伝ってか、ぼくの旅は計画的だった。 ミニマリズムを意識する前なら、今回の一人旅はこうなっていたはずだ。

 

突き詰めたいテーマが自分の中にないので、ガイドブックを睨めっこしつつ、いちばん価値のありそうな観光スポットを、効率よくまわる。

不慣れな土地の交通手段の下調べも欠かさない。

あの駅で降りて、バスに乗って……。

新幹線は指定席、まわりに人のいないできるだけ居心地のよさそうな座席を予約する。

ホテルは、立地はどうか、居心地はいいだろうか、なんならレビューを読んで比較する。

行程に合わせて、食べログを血眼で検索し、最も美味しそうな店を選ぶ。

 

彼女とデートするような場合でも計画的だった。 魅力的なスポットを効率よくたくさんつないで、たくさん楽しいことをする。ネットで調べ尽くしたから、ほぼ間違いなく美味しい食事を食べられる。ぼくは無能な男と思われたくなかった。気遣いのできる男だと思われたかった。

 

そんな旅やデートは下調べするだけで、重労働だ。重労働になることを自分でもどこかわかっているので、腰が重くなっていく。

 

そんな重労働の末の計画は、確かにすべてスムーズに運ぶ。(反対に予定通りいかなければイライラしたりする。あそこに連れて行きたかったのにぐずぐずしてたから時間がなくなった! あそこは、あの時間がいちばんきれいなのに!etc……)

 

そして予定通りの計画は、予定通りの楽しさを、安心を与えてくれた。

今回の旅は無計画がテーマだ。

 

新幹線は自由席。(どの新幹線にも乗れるだと! 知らなかった)

ホテルは適当に。(偶然、集合場所の目の前だった)

交通手段も事前に調べなかった。(「のぞみ」と「ひかり」の違いがわからないから駅員さんにどの新幹線に乗ったらいいか聞く。お土産のお菓子を売っている店員さんにも聞いた「この、か、からすま線? というのはどこに行けば乗れますか???」

以前は無知だと思われるのが恥ずかしくて、人に聞けなかった。スマホをいじって検索するより、人に聞くのがいちばんだ)

食事の場所も自分の感覚を頼りに、路地にある店に思い切って入ってみる(素晴らしいお店だった)

1泊旅行の荷物の準備も、いつも使っているリュックの中身に換えのパンツと靴下だけ放りこんで出かけただけ。パッキングの時間は5秒だ。

 

他の人からすると、こんなのは全然当たり前のことだったりするんだろう。 だけど自分にとって、この無計画さは衝撃だった。

 

本当に解放感あふれる旅。 そんな旅ができた自分にも驚いた。 いつでも思い立ったときに、これからは旅ができるのだ。

 

ホテルにチェックインし、しばし何もしない時間を過ごす。 リュックひとつで、ホテルに佇む。さぞかしミニマリスト気分を味わえるだろう。 ……と思っていたら、どうしてこんなにいらない情報だらけなんだろう。

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集合時間が迫ってきた。 ミニマリストだから、手ぶらで参加しなければ。 ミニマリストだから、モノトーンの服装で参加しなければ。 そんなこだわりも「捨て」、いつものリュックを背に出かける。

 

ミニマリズムを突き詰めていくと、本当に他人の目線が気にならなくなる。 オ

 

フ会の集合場所には、すでにほとんどの人が集まっていた。みんな若い! 中年に片足以上突っ込んでいる身としては一瞬気が引けたが、すぐにそれも忘れた。

 

ミニマリストは他人の目線を、勝手に自分で想像しないのだ。

 

参加者は女性のほうが多かった。ファッションや化粧品など、女性のほうが必要に迫られた持ち物が多くなりがち。そう思っていたから、以前はミニマリズムは男性と相性がいいのではないかと勝手に思っていた。

 

ブログでも女性のミニマリストは多いし、パートナーで取り組んでいる方も多かった。これはとても希望の持てる話だ。 まずは男性に話を聞く。

ぶまさん http://bumichael.tumblr.com/ が今日泊まる場所も決めていないことに、驚いた。2日前にちゃんとホテルを予約していたぼくなど、まだまだ序の口だ。

 

でもぼくは、新しい自分を発見しつつある。

 

ミニマリズムに出会えて、自分でも驚くほど、ぼくは変わりはじめている。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。