点と点をつなぎ、京都へ
佐々木典士

人生の選択肢は自分で決断できることもあるし、手に負えない力に選ばされることもある。しかしそれがどう転ぶかは、後から見ることでしかわからない。だから必ず何かにつながると信念を持つことが大事。スティーブ・ジョブズの一番有名なスピーチの一部を勝手にまとめるとこんな内容になると思う。

「ぼくモノ」を出版してすぐ、武蔵野大学で環境学を教えている明石修先生から対談のオファーを頂いた。ビッグサイトで行われている「エコプロダクツ」という大きなイベントでの対談。明石先生は、地球が有限であるという環境の観点から見ても「足るを知る」社会が必要だと考えておられた。ミニマリズムはいろんな広がりがあるはずと思っていたので環境の先生から興味を持ってもらったことはとても嬉しかった。
一方でイベントに登壇するということはとても怖かった。人前で話すことが、とても苦手だったからだ。ほんの数ヶ月前に、会社で昇進して抱負を述べたことがあったのだけど、顔なじみのたった5人ぐらいを前にして話しただけで自分の声が震えていたのを覚えている。さらに環境について専門的に学ばれている大学の先生とお話をするということにも気後れがした。

苦手なものは少ないほど楽しい

しかしその頃のぼくは「人生で苦手なものは少ないほど楽しい」と思うようにもなっていた。このまま一生、人前で話すことを避け続けたくない。だから思い切って挑戦することにした。
その後、明石先生には髙坂勝さんと武蔵野大学の「じゅんぐり祭」での対談の場を作って頂き、髙坂さんのバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」にも連れて行って頂いた。そのご縁がきっかけで、髙坂さんの著書「次の時代を、先に生きる。」を編集させて頂くことになる。
「エコプロダクツ」での対談は、環境を教えられている別の先生が聞きに来られていた。後日、その先生からご縁がつながり2月からしばし京都に住むことにした。

決断の価値は、結果ではない

 

最初に人前で話すことに挑戦しようと思ったとき、もちろん将来住む場所につながると思って決断したわけではない。ただ振り返ってみると点がつながっただけ。自分の決断が将来どう転ぶか、人には判断できる能力がない。できるのは、振り返ったときにその決断の結果がどうなろうとも、決断を誇りあるものとして思えるかどうかだけである。「エコプロダクツ」の対談は今から思えば拙い出来だったと思うが、あのとき勇気が必要な方の決断ができたことはよかったと思っている。

 
※ということでミニマリストのモデルルームから引っ越すことになりました。会社も手放し、せっかくの身軽さなのでいろいろなところに住んでみようと思います。モデルルームの見学会も終了させて頂きますのでご了承くださいませ。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。