ヨガと瞑想~1時間と23時間~
佐々木典士

「ヨガとシンプルライフ」のみうさんの取材中、もろに影響を受け、その日のうちにヨガマットをポチり、すっかり朝ヨガをすることが習慣になりました(本を読んで独学した簡単なもの。ストレッチや筋膜リリースも合わせて一緒にいろいろやっています)。

体が硬い人には無理?

ヨガ雑誌から取材受けたときに「ヨガの先生っぽい」なんて言われたりしていたのですが……。ヨガ人口も多いですし、「いまさらヨガねぇ……」という気持ちがあり、今までできずにいました。

また元々体がバリバリに硬く、「体が硬いからヨガは無理」と思っていました。ところが体が硬い人ほど変化がわかってヨガは楽しいそうなのです。硬い人ほど、体の声は聞こえづらくなっているはずなので、それが聞こえてくるのも楽しいでしょう。

またポーズを取ることが目的ではない、ということもなんとなくわかってきました。しいていえば「なぜそのポーズが取れないのか」「どこが硬いのか」に気づいていくことのほうがよほど大事なのだろうと思います。

10日間ほどすると、すぐに体に変化が起こりました。相変わらず硬いのには変わりありませんが、苦手で全然できなかった背中を反らす動きが、それなりにできるようになりました。前屈しても、自分の人生でいちばん手が床につく!

古びたトラクターのように自分の体のことを認識していたのですが、ようやくそのトラクターに油を差したぐらいにはなれたようです。

何かで読んだ「硬いからヨガができないのではなく、ヨガをしていないから硬いのだ」ということも腑に落ちた瞬間です。

瞑想の本当の効果

またぼくにとってよかったことは、ヨガをした後、ヨガマットでそのまま瞑想をする習慣ができたことです。今までも瞑想はしていましたが、思いついたときにする、という感じでした。それがヨガマットがあることでやりやすくなり、毎日瞑想をするようになりました。

瞑想をするというのは、どうしても自然に何かを「考えてしまう」こと、「自己のおしゃべり」に気づきそれを何度も何度も止めることです。

何度止めても「自己のおしゃべり」はなかなかおさまりません。
考えないようにしていても、ふとした瞬間に自分の意識は飛んでいってしまう。何かを考えていることにすら気づかず、何かを考え続けてしまう。それを何度でも、ただ自分の呼吸へと意識を戻していく。それを続けていくと、「何も考えていない」時間、深い瞑想の状態が生まれてきます。

瞑想を毎日続けていると変化が起こりました。瞑想をしてない時間の「自分が考えていること」への注意力が高まったのです。「自分が考えていること」を客観的に眺めたり、それが良くないものであれば、すぐにそれと距離を置くこともできる。瞑想とはつまるところ、「自己のおしゃべり」を第三者の目線で捉えることです。無意識のようにスマホを取り出してしまうこともありますが、その行為にいちいち気づいていくこともできる。

以前、ぼくは瞑想の意味とは「脳の再起動」のようなものだと思っていました。脳が活動する中で、ゴミのようなものが溜まっていく。それを何も考えない時間を作ることで再起動させスッキリとさせる。

確かにこういう面もありますが、それだけではない。瞑想はその行為の最中だけでなく、それをしていないときに起こる効果が重要なのだと気付きました。

ヨガも同じです。「固まった体をほぐすこと」だと思っていましたが、それだけではない。ヨガをやっていない時間に、姿勢に気をつけ、体のバランスに意識が及んでいく。自分の呼吸や、体の状態に気づいていくことができる。

ある日、満員に近い電車に乗っていて自分の呼吸が浅くなっていることに気がつきました。エレベーターでも同じです。今まではなぜ苦しいのか気づいていませんでしたが、ただ呼吸が浅くなっていたのです。それに気づけば、深い呼吸をして自分を整えていくことができる。

つまりヨガや瞑想を1時間することは、残りの23時間を整えていくことでもあるのです。

自分が発見者になる

ヨガの経典なんかにはまだあたっていませんし、ここに書いたようなことは、以前からヨガや瞑想をやっている人からすると当たり前のことなんでしょう。けれどそれを自分で見つけていきたいと思っています。

「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」を出したばかりの頃、沼畑さんがあんまり読んでくれてない! と思っていたことがあって軽くたしなめたりしてたんですが、そのとき沼畑さんが言っていたのは「モノを減らして起こる変化は、本を読むのではなく自分で見つけたい」というようなことでした。

今はよくわかります。しばらくは、自分が最初の発見者のように、初めて起こったことかのように変化を楽しみたいと思います。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。