理想の枕を探す旅
佐々木典士

枕を意識しはじめた、最初はテンピュールだった。

テンピュールのオリジナルの形。このテンピュールとは相性がよくて5年近くは使っていたのではないか?

 

 

気に入って使っていたのだが、長く使ったこともあって別のテンピュールに変えた。

 

長い旅のはじまり

 

テンピュールミレニアムは複雑な形状に進化していてより体にフィットするように見えた。しかしこの枕があわず首が痛くなってしまった。ここから長い旅がはじまる。

 

泊まったホテルで、いつもとは違う枕でとてもすっきりと目覚めることがある。

そうすると枕カバーをひっぺがし、メーカーを見て同じものを注文した。

しかし、最初の数日は調子がよくてもそのうち首が痛くなってきてしまう。

 

おかしい。

 

 

そのうち枕問題に対する最終解決がしたくなり、オーダーメイドの枕を注文しにいった。

体のサイズがスキャンして測られる。そのサイズを元に、専門の知識を持ったおばさんと

中に詰め込む材料を決め、試しに寝て、を繰り返しながら枕の高さを決めていく。

 

 

これも最初は調子がよかったが、やはりしばらくするとダメだった。

これはショックだった。なかなかに途方にくれた。オーダーの枕は確か2万円はしたし、オーダーでもダメならどうすればいいというのか。

 

訪れた悟り

 

もうこうなったら根本的な疑問をぶつけるしかなかった。

「そもそも枕は必要なものなのだろうか?」

何もないところで寝たり、タオルを折ったものを使ってみたり。

これもしばらくすると首が痛い。

 

ここでようやく悟った。

自分は「世界のどこかには、自分にぴったりの枕があるはず」だと思っていた。

ただ見つけられていないだけで、どこかには必ず存在している。

だからそれを見つけさえすればいいのだと。

 

 

違った。歪んでいるのは自分の体だったのだ。

思えば、子どもの頃に枕で悩んだことなどなかったのだから。

 

 

椅子でも同じようなこだわりを続けてきた。品質のいい椅子は確かにいいものだ。

しかし座っている椅子がアーロンチェアでなくたって、自分の座り方と姿勢がしっかりしていれば問題ない。品質のいい椅子が歪みという問題を先延ばししてしまうこともあるだろう。

 

 

今の枕とは言えば、『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』という清野とおるさんの漫画で「怪物」と称されていたニトリ先生の低反発枕に落ち着いている。値段はオーダーの枕の20分の1……。

 

 

「どこかに必ず、自分にぴったりのものが存在している」

というのは、自分の外側に問題があるという考え方でもある。

 


清野とおる「そのおこだわり」、俺にもくれよ!!

思わず真似したくなる、B級おこだわりの数々……。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。