桜に教わるミニマリズム
佐々木典士

桜もそろそろ散ってしまう。
毎日のように目黒川を通っているぼくが思ったのは、桜の散り際が、毎年完璧だということだ。


満開になりきってから散るのではなく、
すでに散り始めつつ満開になり、満開の時期もごく短い。

もうちょっと満開の桜が見続けたいな、と思うところで散ってしまう。消費尽くされず、飽きられるより前、そのタイミングがあまりに完璧だから、毎年あれほど桜は歓迎されつつ咲くのだと思う。

桜が咲いている時間は長すぎることもなく、短すぎることもない。ぼくたちが楽しめるちょうどよい時間だ。もっと欲しくても散っていってしまう。

それに比べてぼくたちは。モノに飽きては、次のモノに手を出し、また飽きると次のモノに手を出す。必要以上のお金を際限なく求める。腹八分目より食べて、苦しくなる。短いはずの若さと美にいつまでも執着する。

完璧に散りゆく桜はぼくたちに、やさしく教えてくれている。

「これぐらいがちょうどよいのです。私にとっても、あなたにとっても。足ることを知りなさい」

この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。