半径5mからの環境学
生ごみ堆肥化について門田幸代さんに聞く
佐々木典士

ホームセンターで買える土のう袋。そして身の回りの土とぬか。たったこれだけで家庭から出る生ごみを堆肥にすることができます。この方法を考案し、本を出版するなど生ごみ堆肥を広め続けてこられた門田さんに思いをお聞きしました。

初出:「むすび」2018年6月号(正食協会)

今月のゲスト 門田幸代(もんでん・ゆきよ)さん

広島の農家に生まれ、30年ほど前から生ごみ堆肥に取り組む。「カドタ式土のう袋堆肥」が話題になり、テレビや雑誌に多数出演。最新作は「新カドタ式 生ごみでカンタン土づくり」(学研プラス

門田さんのお庭。生ごみ堆肥を使って育てられたお花は元気いっぱい。

まず、生ごみ堆肥の作り方をご紹介。

堆肥のタネを作る

❶材料は土1L(できれば住んでいる地域の土)、ぬか1L、水0.5L。ホームセンターで手に入る土のう袋1枚。バケツで材料を混ぜ合わせます。ぼくはコイン精米機からぬかをもらってきてます。

❷土のう袋に入れて口を閉じ、ひねって圧をかける。口を下にして、レンガなどを置いて通気性を保つ。発酵熱が出て、白いカビが発生したらタネは完成。

生ごみ堆肥を作る

❸生ごみに、できたタネを振りかける。虫が湧きやすい夏は生ごみは乾燥させてからのほうがベター。塩気が強いものは避ける。少量の油は微生物の栄養に。

❹生ごみを入れたら、土のう袋を叩きつけるなどして混ぜ❷と同じように置いておく。温かくなり、発酵の匂いがしたら次の行程へ。

土に埋めて完熟させる

❺穴を堀り、土に埋める。庭がなければ、少し時間はかかりますが植木鉢で完熟させることも可能です。魚の骨や肉は、穴の底に入れるといい。

❻1か月ほどで、真っ黒でフカフカの完熟堆肥に。栄養満点、しかも安心できる肥料として使えます。

さらに詳しく知りたい方は門田さんの最新作「新カドタ式 生ごみでカンタン土づくり」(学研プラス)をぜひ。

門田さんインタビュー

──門田さんが生ごみ堆肥に取り組まれるようになったきっかけを教えてください。

もう今から30年ほど前の話になりますが、友人と一緒に環境についての講演を聴きにいったんです。それですぐに私たちも何か始めたいということになって、やはり主婦だから生ごみを堆肥化することに興味を持ったんです。

──土のう袋を使われる、というのが最大のポイントだと思いますが、どうやってこの方法に行き着いたんでしょう?

私は農家の生まれで、家には牛がいて、鶏がいて自給自足に近いような生活をしていました。土の匂いや、川のせせらぎを今でも涙が出るほど懐かしく思い出すんです。堆肥も自分たちで作っていて、牛の糞や藁を積み重ねて、それが発酵して湯気がわぁーと出ている様子を子どもの頃から見ていました。それを再現したいと思っていたんですね。ごみ処理の施設を見学したときに、粉砕して細かくなったものを土のう袋に入れてるのを見たことがあって、それを見た途端にこれだと思いました。土のう袋は通気性もあるし、ひねることで簡単に圧をかけることもできます。微生物がぬかを分解すると、発酵熱も出てきます。子どもの頃見ていた堆肥作りを、小さく再現したようなものなんです。

──そこから生ごみ堆肥を広めるために奔走されるんですね。

とにかく熱かったですね。ガレージにズラーッと土のう袋を並べていろいろ実験したり、もう道端に広げて道行く人に声かけて私の方法を知ってもらいたいような気持ちでした(笑)。本の出版をするときも、自分で出版社に企画を持ち込んだり。その頃は「私、微生物が友だちなの」とよく言ってましたね。

──それだけ、生ごみ堆肥の可能性に没頭されてたんですね。ぼくは普段ぬか漬けをやってるんですが、ぬか漬けと同じだと思いました。いつも漬けている野菜の代わりに、生ゴミを入れて土が食べる物にするというような。ただ食べる人だけが違うという気がします。

生ごみ堆肥を使って、野菜や花を植えるとものすごく元気がいいんですよ。元々は私たちが食べているものと同じですから、それだけ栄養があって喜んでるでしょうね。役に立たないものが、微生物の力で再生して、植物を育てる土を豊かにしてくれて次へとつながる。 でも人にはそれぞれ事情があるから、ずっと続けなくてもいいと思うんです。でも一度やってみると、食べ物を大事にしようという気持ちとか、身の回りの微生物に思い至ったりを実体験するんですよね。

──ぼくも生ごみ堆肥を作りはじめたんですが、毎日定期的に土に触れるだけで何か気分が変わるのを感じますね。

私が生まれ育った自然を今も懐かしんでいるように、人間本来の何かを堆肥を作ることから呼び起こせたら嬉しいですね。

門田さんよりおすすめの1冊

菅野芳秀『生ゴミはよみがえる』(講談社)
山形で町ぐるみで生ごみを集めて堆肥化するということを進めてらっしゃいます。
堆肥化についても学びましたが、信念を広めることについての姿勢に大変影響を受けました。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。