株式会社「じぶん」
 佐々木典士

大抵の悩みは人間関係から来るもの。

働くときもそう。企業に勤めていればなおさら。

嫌な人間とも、なんとかうまくやっていかなければならない。

 

 

フリーランスになれば、1人社長になる。とよく言われる。

 

 

報連相は自分のなかでだけ行えばいい。

飴と鞭を与えるのは自分。

自分の教育担当者は自分。

 

 

自分とうまくやりさえすればいい。

事業がうまくいかなかったら上司のせいではなく自分の責任だ。

 

 

ことはそう簡単だろうか?

1人になったらなったで今度は

株式会社「じぶん」に入社するのではないか?

 

 

株式会社「じぶん」には大きく「体」と「心」という局がある。

同じフロアの隣同士に並んでおり、兼任している担当者も多い。

ここの連絡が密接でなければ株式会社「じぶん」はうまくまわっていかない。

 

 

株式会社「じぶん」の稼ぎ頭、花形である「脳」部の構成を見てみる。

脳部は全体で1,300gで、それを構成するのは何千億個のニューロンとグリア細胞。それぞれの細胞には全ヒトゲノムが入っており、ほとんど大都市のように混み合っているという。ひとつのニューロンは、近隣のニューロンと1万個の接合部を持ち、毎秒何百回と電気パルスを交換している。

 

脳部だけを見ても、ほとんど地球や宇宙と変わらないような複雑さで組織化されている。こんなとんでもない規模の大企業の社長、務まる人はこの世にいるのだろうか……。

 

 

しばしばこんな夢想をする。フリーランスになると、嫌な人との仕事はその気になれば断れるし、毎日顔を合わせなくてすむ。非常に楽でメリットだと思う。代わりに深く付き合っていかなければならなくなるのは自分。自分だからと言って思い通りになるわけではない。社長待遇だと聞き悠々と座った椅子は、じっさい窓際に置かれていたりする。

 

 

これで問題は解決だ! と思ったとき、元からあった別の問題がひょっこり顔を出すのである。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。