コンプレックスが形作る個性 佐々木典士

コンプレックスを修正すると似通う

顔のパーツの理想形というのは、なぜか似通っている。高い鼻筋、細い顎、並行二重、整った歯並び。だから理想に近づけようと手術していくと、同じような顔が量産されてしまうことになる。どこかの国では、ミスコンの出場者が皆同じ顔で区別ができないと話題になった。

であれば、他者からの区別や、個性を形作っているのはむしろコンプレックスの方だと言うことができる。

人は苦手なものを研究する

芸能界に接して働いていた時、洋服のプロフェッシェナルであるスタイリストさんの多くが美男美女でもスタイルが良くもないことに気がついた(本を出して自分のライフスタイルを紹介しているような人が代表ですが、例外ももちろんいます)。

なるほど、美形でスタイルがよければ、服は適当なTシャツとジーンズでさまになる。そうではなく、簡単に服を着るだけでは足が短く見えたり、顔が大きく見えたりするから、そうならないために研究する余地が生まれる。似合う色が少なければ、なぜ似合わないのか色について考えるきっかけになる。

人は苦手なものを研究する。英語の文法を勉強するのは、英語が苦手だからだ。日本に生まれて、日本語ネイティブの人は日本語の文法を勉強しようとは思わない。

何かにつまずくから、つまずかないための工夫をする。ぼくの本もいつも苦手なものがテーマになっている。片付けやモノの管理が苦手だったからミニマリズム、ついついダラダラしてしまうから習慣、そして次は追い求めることに苦手意識があるお金。そうして考えた苦手の原因や、それに向き合うための方法を人に伝えることが仕事にもなる。

コンプレックスや苦手なものこそが自分を形作っていると思えば、単に疎ましく消去すべきものではなくなり、眺め方が変わる。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。