エンプティ・スペース 015
どこにも行かない 
沼畑直樹
Empty Space Naoki Numahata

2019年3月7日  ※およそ1年前に書いたものです

去年、2018年の6月に家を購入して、今は年を越え3月。その間、どこにも旅行に行っていない。

友人はニュージーランドにドライブ旅行に行った。

友人はイギリスに行った。

義理の姉は先週、ベトナムに行った。

海外はまだいい。国内旅行も一切行っていない。

「ミニマリズムの暮らしを始めると、旅をしたくなる」

というが、最近は本当に旅行というものをしていない。

これは、新しい家がまだまだ新鮮だということと、なんとなく贅沢はしないでおこうという心のブレーキがあるからだと思う。

妻も私も、旅行に行きたいと思いつつ、節約もしたい。

札幌に帰省もやめて、飛行機代を親に渡して東京まで来てもらうことになった。だから札幌旅行もない。

仕事でも海外の仕事をブッキングしなくなり、それも気持ちの問題なのだが、なぜか気分が乗らない。これはまた別の理由があるかもしれない。

「未知の世界へ旅…」という、ある車のキャッチコピーを見て、旅いいなと思うのだが、広告に出てくるような森や岬はいったいどこにあるのだろう。

他に観光客がいなくて、海の見える高台に車を止めて、テントを貼れる場所なんてどこにあるのだろう? 国内で。

あったとして、家族を置いて一人車で何キロ走ればいいのだろう。

普段の車旅行はせいぜい長野の松本あたりで、京都まで行ったことはあるが、簡単なドライブではない。

キャンプは楽しい。森の中で楽しい。でも、人でいっぱいだ。

ゴールデンウィーク、10連休にキャンプでも行こうかと妻が言う。

わかる。わかるけど、GWのキャンプ場なんて、場所の取り合いでぎゅうぎゅう詰めだ。

予約して場所が決まってるタイプは好きじゃないし。

結局は、近くの公園のBBQか、ピクニックとなる。

私はなるべく家族と過ごしたい。

その気持ちと、孤独になりたい気持ちは、仲良くなれない。

孤独が好きで一人旅をして、友人のいない島で暮らしたが、それはとんでもなく楽しかった。

一方で、友人の車に乗りながら3人ほどで大阪、兵庫、京都、和歌山、奈良、名古屋、長野、新潟、札幌と旅をした思い出も深く心に刻まれている。

もう少し子どもが大きくなったら、車での家族旅行も幅が拡がるだろう。

私にとっての未知の場所は世界中にあるけれども、近辺には少なくなった。

でも、子どもに見せたい、子どもにとっての未知の場所がたくさんある。

だから自分の旅が主役でなくなってきているのだと、書きながら納得した。

GWは、宿はとらずに日帰りでいろんなところに行こう。

予定のない旅を。

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この記事を書いた人

『最小限主義。』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』他(Rem York Maash Haas名義)、旅ガイド『スロウリィクロアチア』他

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