寄付の「ダッシュボタン」
佐々木典士

何かを習慣づけようとするとき、

行動の「ハードルを下げる」というのは鉄則である。

手順を簡単にし、すぐに行動に移せるようにする。

ここをいちばん突き詰めてやっているのがAmazonでとても参考になる。

 

「すぐに買う」ボタン(ボタンを押した後、スワイプするだけで買える)

「1click購入」そして「ダッシュボタン」。

とにかくAmazonで買うのはハードルが低く、簡単だ。手順のミニマリズム。

 

最近「バーチャルダッシュボタン」がAmazonに並ぶようになった。そこには自分がAmazonで買ったことのある生活用品などがならび、ボタンを押すだけで買える。たとえばいつもの歯磨き粉が切れたときにそのボタンを押せば、すぐに補充してくれるような仕組みだ。

 

一方、Amazonでする買い物は指一本で終わって簡単だが、それから玄関まで届くのには配送の方の苦労がある。配送にはガソリンが使われている。丁寧な梱包材は作るためにも処分するためにもエネルギーがかかっている。ぼく自身もよく利用しているが、なるべくお急ぎ便は使わず、まとめて発送をこころがけている。不在時には荷物を玄関先に置きかえってもらうように、玄関に貼ってある。

 

SNSのハードルをあげる

 

逆に、習慣づいてしまっているときにやめたいときは、

「ハードルを上げる」ことが鉄則だ。

 

買い物依存症で困っている人は、こういった仕組みを逆手に取る。ショッピングサイトから毎回ログアウトすることを心がける。パスワードも自動で埋まらないようにパソコンやスマホを設定する。IDやパスワードといったログインにかかる手間を増やすことで、買い物を難しくする。考える一呼吸を作る。

 

 

ぼくもtwitterのアプリをスマホに入れているとどうしても見てしまうので、アプリは削除している。スマホブラウザからも見れるが、IDとパスワードも消去しているので、入力する手間で踏みとどまれる。

 

twitterを見るのは基本Macからだけ。見終わったら、アプリも終了させる。見るときは、メニューから

「移動」→「アプリケーション」→「twitter」

という手順を挟まなければいけないので、その手順のどこかで自制する。

 

寄付のハードル

 

いつも思うのだが、寄付にもAmazonのような仕組みがあったら、もっと寄付金が増えると思う。適切な金額なら、お金を出してもいいと思っている人は多いはず。それができないいちばんの原因は「面倒だから」。ひとつひとつのサイトでIDとパスワード、名前などを入力し、支払い方法を選択し、となると、せっかく芽生えた善意が手順に負けてしまうこともある。

 

ダッシュボタンを見ていて、こんな未来を夢想した。

Amazonで何か買うときには、ついでに「寄付ダッシュボタン」でさくっと寄付をする。

寄付は金銭的にはマイナスだが、心理的なプラスがある。「Thank You!」ぐらいのメッセージが表示されるといいかもしれない。

昨日はアジアだったので、今日はアフリカかな。なんてちょっと楽しんじゃないだろうか。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。