走ってする後悔はない
佐々木典士

村上春樹さんの「走ることについて語るときに僕の語ること」という本の中に、オリンピックランナーの瀬古利彦さんにインタビューしたという件がある。

 

――「 瀬古さんくらいのレベルのランナーでも、今日はなんか走りたくないな、いやだなあ、家でこのまま寝てたいなあ、と思うようなことってあるんですか?」 と質問した。瀬古 さんは文字通り目をむいた。そして〈 なんちゅう馬鹿な質問をするんだ〉 という声で「当たり前じゃないですか。 そんなのしょっちゅうですよ!」と言った。

 

――たとえ筋力や運動量やモチベーションのレベルが天と地ほど違っていたとしても、朝早く起きてランニング・シューズ の 紐を結ぶときに、 彼が僕と同じような思いをしたことがあるのかどうかを。そして瀬古さんのそのときの答えは、僕 を心底 ほっとさせてくれた。ああ、やっぱりみんな同じなんだ、と。

 

 

この本を書いている時点で、20年以上ほぼ毎日走り続けている村上さんと、オリンピックに出るようなランナーですら今日は走りたくないと思うときがしょっちゅうある。

 

 

ぼくも習慣を保つうえで、朝まだ寝ぼけているような状態だと「今日はお休みということにしようかな」とよく思う。「もしかしたら疲れが残っているかもしれないな」と考えたりする。しかし、あまりによく思うので、こういう自分から出てくる意見は無視することにした。

 

 

大事なのは、自分で決めた約束を守って後悔することはないといこと。

 

 

約束を守れなくて後悔したことは山ほどある。しかし早起きできたあとに「早起きなんてするんじゃなかった」とか、運動したあとに「運動なんてして損した」なんて思ったことは一度もない。

 

 

村上さんが質問をしてほっとしたように、ぼくも心底ほっとした。「今日はやりたくない」と思うこと自体はいつだって誰にだってある。その後どうするかは、習慣の技術の積み重ねでどうにかなるものだ。

 


 

村上春樹「走ることについて語るときに僕の語ること」

トライアスロンや、ウルトラマラソンへの挑戦。

小説家の資質について。本を書くことは肉体労働であるということ。

小説を書こうと思った瞬間や、デビュー時のエピソードなども興味深い。

毎日10km走るという村上さんにならって、ぼくも10kmに距離を伸ばした。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。