選挙と習慣
佐々木典士

習慣には「1枚のコイン」問題というのが存在する。

お金持ちになることが1000万円貯めることだとする。

すると目の前の10円を拾うことなど目標達成のためにほとんど役に立たない、つまらないものに見えてしまう。

 

 

英語をすでにペラペラと話している人を見れば、自分が今必死になって覚えようとしているひとつの単語など意味がなく思えてくる。

 

つまり、今自分がしている行為と、目標達成のために必要な総数を比べてしまい、その大きさを前にしてやる気がなくなるという問題である。

 

 

選挙も同じようなものだと思う。大勢は先に報道されてしまうので、

勝ちそうな方に入れても、負けそうな方に入れても、

自分の一票など意味がない気がしてしまう。

大して変わらないなら、雨の中出かけていくのも面倒だ。

 

 

ぼくも過去に「どうせ死票になってしまうから」という理由で選挙に行かなかったことがある。

 

 

選挙に行かない学生の理由として「間違った投票をして世の中を悪くしたくないから」というツイートが話題になった。これにも共感した。よくわかっていないことにも口を出す人が多いなか、慎ましくもある。

 

 

投票しないのも意思表示。それもそうだと思う。

東浩紀さんの積極的棄権にも共感した。

 

 

それでも今回の選挙は「自分が決定権を握っている」想定で投票に望んでみた。

自分が間違っていたとしてもそれも受け入れたい。すべてを把握してから行動するのも無理である。

今まで間違いばかりおかしてきたのだから、今後も間違えながら修正していく。

 

 

「1枚のコイン問題」を乗り越えるために大事なのは、目標を達成することではなく、行為自体に喜びを見いだすことだ。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。