20年の要約
佐々木典士

高校の同級生と卒業以来、20年ぶりに会った。

18歳以来だから、会っていない時間のほうがもはや長い。

 

 

 大学の頃なんて思い出すことも人に話すこともあまりないが、自然と話はそこからになる。彼はフェンシングに打ち込んだ高校時代を経て、アメリカの大学へ。そこでガラスやアートに出会い、編集者として仕事をし、帰国後は翻訳の仕事や、英語を活かした仕事を興している。

 

 こんな風に20年をまとめて話す機会なんてほとんどない。20年も1時間の会話で要約できなくもないということに複雑な思いもあったが、Wikipediaの要約を読むのに1時間かかる偉人もそうはいないだろう。

 

要約することには発見もあって、彼はこうやってまとめて話してみると「いつも人がやっていない珍しいものに飛びついてきた」ということに気づいたという。この間書いたのは、要約せざるを得ないという話だったが、要約する効果だってある。

 

 

 自分の傾向といえば、お笑いに興味を持ったり、映画に興味を持ったりその時々で、てんでバラバラ。共通することといえば本かなという感じ。大学では本を読んでいたような記憶しかないし、就活も3年間続けたのだが、出版社しか受けなかった。(ちなみにアメリカの大学では帽子を空に投げるまで勉学に忙しくて、就活なんてする暇がないのだそうだ。就活って何? という感じらしい)

 

 初めて本を書くときも、本なんて書けるのかと不安だったが思えば仕事でいろいろ書いていた。『STUDIO VOICE』で文章を同僚や先輩に褒められるとうれしかったし、芸能の仕事をするようになってからも自分でインタビューし、原稿を自分で書いてきた。忘れていたが、1冊まるごとライターとして書いた本だってあったのだった。

 

 そんな風に思い返すとなんとなく共通しているものがあるように見える。それが人格や性格と呼ばれるのかもしれない。

 

 しかし、現実は大体デタラメで、適当な機会にパッと乗っかってきた結果の積み重ねだ。5年後、20年後の目標も話題になったが、ぼくの答えは「5年前を振り返って現実が想像通りに言ったためしがないので目標はたてない」ということだった。2人とも実家は香川県だが、縁もゆかりもない京都に住み、まさかこんな仕事に就くとは、という仕事をしている。

 

 

そのとき「やりたい!」と思ったことをするのがぼくの希望だ。

それはいつもでたらめで、途中でやめたりもする。

後から見ると、意味を汲み取ろうと思えばできなくはないが、基本よくわからない軌跡を描いている。

 


長野博文『ポートレート・マスターブック』 若気の至りで、編集者&ライターをアクロバティックにこなした本。人生で2番めに大変な仕事。新品品切れ。今も新しさのあるメソッドなので、ポートレートに興味のある人はぜひ。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。