静けさと歌。  
沼畑直樹

 

基本的に家で仕事をするときは、相棒のハチくんとスカイプで画面共有をして仕事をしている。

1月はまぁまぁ忙しいのだけど、仕事を進めているうちに「石田ゆり子のインスタの猫のやつがさぁ」と脱線していく。

コーヒーを挽いていると、その音がハチくんのほうにギーギーとノイジーサウンドになるので、気をつけながら挽く。

ハチくんが石田ゆり子の愛猫ハニオの声を初めて聴いているので、邪魔したくない。

今日も部屋の静謐具合はいい。

洗い物もすべて拭き終え、音楽も聴いていない。

壁にはなにも貼っていないのが基本だが、友人の年賀状を娘が壁に貼り、さらにクリスマスプレゼントでもらったサーカスの壁紙も娘がペタペタ貼ったのでそのままにしているが…。

※友人の年賀状は息子の写真と同じポーズをしている、友人の子ども時代の写真を並べたもの。気に入ったらしい。

 

静かでいいなと思っていたら、ハチくんの方からガタゴト、ゴトゴトと師走の工事中のような騒音。

もう1月なのに、なんだろうと思っていたら、灯油ストーブの上で、コーヒーのお湯を沸かしている音だった。

沸騰に近づくと、余計にガタゴトするらしい。

PCのマイクはなんでも拾ってしまう。

 

静けさは好きだ。

私の家は大通りからすぐなのに、あまりそこから音はやってこない。

幹線道路の目の前だったら、こんなに静かにコーヒーを楽しめない。

でも、音に関することも好きだ。

小さいころ、音楽が苦手だった反動かもしれない。

 

実は最近、スピーカーを買った。

小さく、高性能で、デザインはシンプル、部屋に溶け込むかどうかという条件を満たし、スマホの音楽やさまざまな音楽を受け入れてくれるもの。

食事のときには普段聴かないクラシックやジャズを流すようになり、今までになく音楽を楽しんでいる。

いわゆるコンポ(CDやテープが聴けるオーディオセット)という高価なものは、兄がケンウッドの大きなやつを私が小学生のときに買ったため、自分が買う気はおきず、一人暮らしを初めてからもコンポもスピーカーも持ったことがなかった。

だから、生まれて初めてのスピーカーということになる。

本当は何もない部屋にクールなミニコンポひとつというのが素敵だけど、今の部屋の物量にそれほど影響を与えない小さいものにした。

 

 

音といえば、娘との歌の時間も大切にしている。

10年ほど前に、「日本人の大人がカラオケ以外の日常で一緒に歌う機会が激減している」と思い、歌を暗記して友人と一緒に歌う「アワライ」という遊びをしていた。

今も、人と一緒に歌うことは精神的に大切なことだと捉えていて、娘とも一緒に歌を歌う。

最近は知らない歌を流して、知っている歌のようにシャドーイングをするのが楽しい。

しっかりと聴きながら直後に歌うというのは結構高度な技で、集中しないとできない。

子どもは自然とそれができるので、「知っていることしか口にできない」大人より上手い。

 

10年以上前から、アーティストの宮沢和史さんのオフィシャルウェブサイトを制作していて、コンテンツ制作のために撮影やインタビューをしてきた。数年前に音楽活動を休止したのだが、今年から静かに再始動をする。

高野寛さんやおおはた雄一さんとのセッションだが、宮沢さんはきっと、歌いたくて仕方がないのではないか。

アーティストではない自分でも、友人たちとギターやウクレレを弾いて、同じ歌をうたったアワライの遊びが忘れられない。

静かな朝、静かな午後、静かな夜も楽しみつつ、音のある日常も存分に楽しみたいと思う。

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この記事を書いた人

『最小限主義。』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』他(Rem York Maash Haas名義)、旅ガイド『スロウリィクロアチア』他

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