書かないことは、あまりにも楽
佐々木典士

作家のジョン・アップダイクは少なくとも1日3時間は新作に取り組んだという。なぜなら

「書かないことはあまりにも楽なので、それに慣れてしまうと、もう二度と書けなくなってしまうから」

ぼくは「ぼくモノ」の後、「本を書かないこと」を習慣にしてしまっていた。だから再開することが恐ろしいほど難しかった。これはたとえば、運動を続けていた人でも、1年も2年も休んでから再開すると身体がなまり、ほぼゼロに近いところからのスタートになってしまうのと同じようなものだと思う。

 

ぼくたちは習慣で、できている。」も構想期間2年半、製作期間は1年と、とても時間がかかってしまったのもこのためだと反省している。(もちろん時間をかけたおかげで、原稿に反映できた情報がたくさんあってその甲斐はある)

 

「ぼく習」の校了を終え、解放感に浸っていたのだが、そう長くは持たなかった。プレッシャーが大きかったので、終わったらのんびりしたい! と思っていたはずなのだがそうもいかないようだ。もう次を始めたくなっている。

 

身体のこわばりも3日ほどで充分に回復した。だからすぐに次の本に手をつける。時間と労力をかけたものなので「ぼく習」の評判や売れ行きは当然気になる。しかしそれに振り回されないコツは、新しいものに取り組めているかどうかだと思う。

 

トルストイは「戦争と平和」の執筆に没頭している時、こんなことを言ったという。

「私は毎日書かなければならない。 それは成果をあげるためではなく、習慣を失わないためだ」。

 

書かないことは本当に楽なのでそれに浸ってしまう。成果ではなく作られた習慣を維持するために、ぼくも間を空けずに毎日書く。

 


天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々

クリエイターたちが一般的なイメージと違い「インスピレーション」などに全然頼っていないことがわかる本。質の高い仕事を続けるためには、とにかく毎日仕事の時間を決めて、それに取り組む習慣を作ることが必要だとよくわかる。

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この記事を書いた人

作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。『BOMB!』、『STUDIO VOICE』、写真集&書籍編集者を経てフリーに。ミニマリスト本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は25カ国語に翻訳。習慣本『ぼくたちは習慣で、できている。』(ワニブックス刊)は12ヶ国語へ翻訳。